SHI NO SHIMA
本シリーズは、アルノルト・ベックリンによって1880年から1886年の間に繰り返し描かれた「死の島」と福永武彦による同タイトルの著作「死の島」1976から着想を得ています。これまで、アルノルト・ベックリンの「死の島」は文学や音楽、演劇などによって多くの芸術家に翻案されてきました。福永武彦による著作「死の島」もその一つです。
上下巻からなる本作は、広島で被爆し心と体に深い傷を負った芸術家・萌木素子が描いた『島』という作品に惹かれ出会った出版社に務める相馬鼎と萌木素子と共に暮らす美しい年上の相見綾子の3人を描いた長編小説です。戦後の広島を舞台に平和とは何か、生きるとは何か、愛とは何か、などを描く本作品に福島第一原子力発電所事故を重ね、原爆の図を制作した故丸木位里・俊夫妻が生前に語った「平和になった時、原子爆弾は原子力発電所に化けて出ました。エネルギー平和利用の名のもとで、放射能がばらまかれているのです」という言葉を思い出します。
島国である日本、喪の歴史を描いたベックリンの5枚の「死の島」、広島を舞台に描かれた福永武彦による「死の島」、そして福島の原発事故。
私たち日本人は何度もの放射能による喪の歴史の中で何を学び、どう歩んできたのでしょうか。そしてこれから、どのような世界に向かっていくのでしょうか。本シリーズは福永武彦が書いた世界の続きであり、これからも考え続けなければならい私たちの未来への祈りが込められています。
*2017年制作「Die Toteninsel」はこのシリーズ制作のきっかけになりました。全ての作品はベックリンの各作品に対応しており、これ以上の原子力による喪の歴史が繰り返されず5作で完結となることを望んでいます。
SHI NO SHIMA – HIROSHIMA
死の島(広島)
2018
80×150(cm)
Acrylic on canvas
Taguchi Art Collection
SHI NO SHIMA – NAGASAKI
死の島(長崎)
2018
81×151(cm)
Acrylic on canvas
Taguchi Art Collection
SHI NO SHIMA – Daigo Fukuryū Maru
死の島(第五福竜丸)
2018
80×150(cm)
Acrylic on canvas
Taguchi Art Collection
SHI NO SHIMA – FUKUSHIMA
死の島(福島)
2018
74×122(cm)
Acrylic on canvas
Taguchi Art Collection
左:平和への手引き-ヒロシマ
left:Guide to Peace- HIROSHIMA
右:平和への手引き-フクシマ
right:Guide to Peace- FUKUSHIMA
2018
dimension variable
Colored pencil, chewing gum(made in America), Book(SHI NO SIMA written by Fukunaga Takehiko), Bookcase(SHI NO SIMA written by Fukunaga Takehiko)
Private Collection
Die Toteninsel
2017
65.2×91 cm
Acrylic and oil on canvas
Private Collection