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Fukuzawa Ichiro series


■ ケイショウ -悪のボルテージが上昇するか 22 世紀
ケイショウ -悪のボルテージが上昇するか 22 世紀
2018
アクリル、油彩、キャンバス、パネル
197×333.3(cm)
Collection of the artist
−作品解説−

 本作品は、福沢一郎の晩年の大作《悪のボルテージが上昇するか21世紀》を黒い絵の具のみを用い模写をしています。同様の技法で描いたシリーズ「Trinitite」は第二次世界大戦時に描かれた戦争画を、制作するのも鑑賞するのも困難な黒という色で描くことで、薄れていく過去の記憶や歴史との関係を探るというものでしたが、今回は福沢一郎が1986年来たる21世紀を見つめ描いた本作の普遍性を22世紀という今の私たちにとっての未来にケイショウ(継承、警鐘、形象)しようと試みました。過去と同じように未来も想像するのは困難です。しかし未来は私たちの力で変えることが可能です。この作品のような未来が訪れず希望の色彩に溢れた未来が来る事を願います。

展示風景:特別展示−平川恒太「悪のボルテージが上昇するか22世紀」福沢一郎記念美術館(富岡)(2018ー2019)
撮影:髄  画像提供:HIRAKAWA STUDIO

■ニューヨーク 1965・白と黒のダンソウ
 

ニューヨーク 1965#1・白と黒のダンソウ

2018 年 アクリル、油彩、ラッカー、ピグメント、福沢一郎撮影写真(平川恒太ディレ クションによるプリントは Unique Piece、D プリント、パネル)、額装 サイズ可変(604×851(mm) ×3枚)

Collection of the artist

↑◆ニューヨーク 1965#2・白と黒のダンソウ

2018

アクリル、油彩、ラッカー、ピグメント、福沢一郎撮影写真(平川恒太ディレ クションによるプリントは Unique Piece、D プリント、FM プレート)、額装

variable(545×354(mm) ×3)

Private Collection

↓◆ニューヨーク 1965#3・白と黒のダンソウ

2018

アクリル、油彩、ラッカー、ピグメント、福沢一郎撮影写真(平川恒太ディレ クションによるプリントは Unique Piece、D プリント、FM プレート)、額装

variable(545×353(mm) ×3)

Collection of カスヤの森現代美術館・MUSEUM HAUS KASUYA

−作品解説−

福沢一郎がベトナム戦争前夜の1965年、公民権運動が盛り上がるアメリカの大都市ニューヨークで撮影した写真を明部は、白い絵の具のみ、暗部は、黒い絵の具のみを用い模写をしています。明部、暗部だけを描こうとしても明部を描けば暗部が生まれ、暗部を描けば明部が生まれます。しかし、その像はどこか虚ろです。

福沢一郎がファインダー越しに向き合ったニューヨークは様々な人種差別などを抱えながらもアメリカという国の姿を写し出しています。

タイトルの『白と黒のダンソウ』とは、福沢一郎と共に日本のシュルレアリスムを牽引した詩人・美術評論家の瀧口修造の詩・評論集の「白と黒の断想」に由来し、アメリカが抱える社会の断層と福沢一郎の写真からの断想を表します。また福沢一郎がアメリカから帰国後に制作した『stop war』は、黒い絵の具のデカルコマニーによって制作されたシリーズ『黒い幻想』と同じ手法の上に描かれており、黒い色彩と反戦のメッセージから本作を制作するきっかけになりました。

一見、単にニューヨークの街を写したスナップ写真に見えますが、白黒写真の明と暗の関係をアメリカの明と暗の歴史に置き換えて見ると面白いのではないでしょうか。NO RIGHT TURNの交通標識をなぜ写されたのでしょうか。当時アメリカの政権は民主党でした。何かのメッセージがあるのでしょうか。


 ■芸術家たちの対話 –バラなしでは生きていけない

芸術家たちの対話#1 –バラなしでは生きていけない

2018

アクリル、福沢一郎の赤と青(リキテックス)キャンバス

72.7×53(cm)

Private Collection

 

−作品解説−

福沢一郎の作品にはいくつかの特徴があります。1つに色彩です。中でも福沢作品の赤と青は印象的な色彩と言えます。福沢一郎は混色をあまり好まず鮮やかな絵の具の原色の美しさを大切にしたそうです。また、レオナルド・ダ・ヴィンチや古今東西の名作に着想を得た作品が多いのも特徴と言えます。そこで今回、福沢一郎が使用していた絵の具から使えるもの譲っていただき福沢が赤を多用して描いた花の絵を描こうと考えました。またただの花ではなく、社会彫刻という概念を提唱したドイツ人アーティストのヨーゼフ・ボイスが人と対話する際にお互いの間に置いたバラの花を描こうと考えました。社会彫刻とは「芸術こそ進化にとっての唯一の可能性、世界の可能性を変える唯一の可能性」といったボイスの信念から発しています。この信念は福沢一郎作品にも通じるように感じます。ヨーゼフ・ボイスと福沢一郎、ドイツと日本、共に大きな大戦と戦後を経験したアーティストに通じるものがあるのでしょうか。1984年にヨーゼフ・ボイスが西武美術館で展覧会をした際、この年86歳になる福沢一郎は、この展覧会へ行きじっくり鑑賞していたそうです。

展示風景:特別展示−平川恒太「悪のボルテージが上昇するか22世紀」福沢一郎記念美術館(富岡)(2018ー2019)
左から:芸術家たちの対話#1,#2,#3
撮影:髄  画像提供:HIRAKAWA STUDIO